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クリエイターインタビューvol.2|抽象画家 野村佳代/Kayo Nomuraさん-幼い頃に感じた言葉の壁。人との繋がりを通して生まれる作品-

 

こんにちは、次世代ARTプラットフォーム『ARTWORKS.gallery』運営チームの宮久保です。

 

本シリーズでは、登録クリエイターにインタビューを行い、その人となりや作品制作の裏側にせまるインタビュー記事を発信していきます。
インタビューを通じてクリエイター自身を知ることで、クリエイターが作り出す素敵な作品への理解を深め、“もっとアートを身近に”感じていただけると思います。

 

Vol.2の今回は、『対話から生まれるアート』をコンセプトに抽象画を制作している野村佳代さんにインタビューさせていただきました。
これまでのご自身の経験から深く心で感じた「私たちは根底で皆繋がっている」という思いを大切に、自分を通して相手の言葉を絵にする、という独自の技法で表現する野村さんの素顔に迫ります。

 

 

【野村 佳代さんProfile】

兵庫県在住の抽象画家。幼少期をカリフォルニアで過ごし、帰国後も多くの土地で暮らした経験を持つ。アーティストとして活動するまでにマスコミ、外資系企業、シンガポール勤務、とキャリアを重ね、人間の持つ多様性を実感する。人の数だけ存在する多様な物語の中に潜む普遍的な真理を、絵画の世界に落とし込むように。‘今’に意識を集中し、言葉とその奥にあるエネルギーや、人や空間すべてとの『「対話」から生まれるアート』をコンセプトに、個展の開催やDialogue Drawingなど幅広く活動している。

 

 

 

①クリエイターとしての原点

 

絵描きとしてのはじまり

 

ー世界を股に掛け様々な業界でキャリアを重ねてきた後、クリエイターへの道を選んだのは何がきっかけだったのでしょうか。

 

目標を見失い、原点回帰したことがきっかけです。
私は帰国子女で海外に住んでいたこともあり、国際的なビジネスウーマンになるというのが夢でした。その夢はシンガポールの会社で多国籍の方々と英語を使って働くということで実現したんです。でも全然思い描いていたものではなくて。私が理想としていた夢って一体何だったのかと....。このように挫折をして日本に戻ってから半年くらい、本当にやりたかったこと、自分が好きなことは何なのかを考え、記憶を遡っていくと、幼稚園で楽しかったことを思い出したんです。
それは絵を描くことでした。

 

ー大分幼少期まで遡りましたね(笑)好きなことを見つけるまでの半年間はどのように過ごされていましたか?

 

幼い頃まで遡ったのは、親の植え付けとか社会の価値観に染まる前の純粋な気持ちのある頃に戻らないと、本当にやりたい事は見つからないと思ったからです。
その間は就職活動もしました。また、得意な英語以外に特技がないと思っていたので、英語を使う仕事をした方が良いかなと通訳学校に行くか悩んでいたり...。でも、別に英語が好きなわけじゃないと気づいてしまったんです。絵を描くまですごく遠回りしました(笑)

 

ー半年かけて悩み抜き、「ここだ」という本来行くべき道に辿りついたんですね。

 

アートとの出会い・アートへの目覚め

 

ー幼稚園時代にまで遡って思い出した“絵が好き”と思ったきっかけはなんですか。

 

幼稚園の頃、チラシの裏に無我夢中で絵を描いていたことをフッと思い出したんです。その時の「楽しかった」という感覚が心に残っていることを発見したと言いますか...。
映像として記憶に残っているのではなく、「楽しい」という気持ちが根底にあることに気付き、それが今にずっと続いている感覚です。

 

 

クリエイターとしての活動軸の発見

 

ー「絵を描くことが好き」という発見から活動を始め、次にアート活動の軸を発見するまでをお伺いします。活動軸は『対話(言葉)とアート(イメージ)を行き来すること』とブログで拝見しました。きっかけは、幼い頃の海外での暮らしで感じた言葉の壁が根底にあるのでしょうか。

 

そうですね。アメリカでの暮らしは言葉も通じない中、クラスメイトの国籍も様々で、初めてできた友達が韓国人だったこともあり、日本人としての自分を自覚しました。個人の在り方や考え方など生まれ育った地域によって全く違うんだという原体験となりました。それに加えて、会社員になってから自分に向き合うきっかけがあり、心理学を学んだことも大きなポイントになりました​​。

 

ー言葉の壁、考え方の違い、自分自身の心理と向き合うなどのご経験から、人と向き合う”対話”とご自身が好きな”アート”という軸が確立されたんですね。

 

個展開催後の変化

 

ー活動軸確立後、初めて個展を開催され、何かご自身の中で変わったことはありますか?

今までは得意なことを仕事にしないといけないと思い込んでいたのですが、「好き」を軸に仕事をしてもいいんだ、と自分に許可を与えられたと感じました。外側に合わせて自分を作っていくのではなく、自分の内側から溢れ出たものを仕事にしてもいいんだ、と確信を得られたことは大きな発見でした。

 

 

 

②ファンとのかかわり

 

対話を通じてその人の"今"を描くアートセッション『Dialogue Drawing』

ーDialogue Drawingは対話をしながら相手のためだけの作品を描くセッションですね。作品を描く中で野村さんはどのような体験をしてますか?

 

Dialogue Drawingはその人が今最も大切にしている想いを軸に対話しながら、その人の内面を即興で描いていくアートセッションで、描けば描くほど、どの人の中にも”美しい内的世界が存在している”ことを、ありありと実感しています。
私たちはともすると「自分なんて」とか、「自分にはなにもない」と言うように、自分自身を肯定的に思えない時があると思います。でも本当は、どの人の中にも美しい世界がある、つまり、誰もが本当はただ存在しているだけで美しく、自分を卑下する必要なんてない、という確信が、何百人の方の想いを絵にすることで深まり続けています。

 

ーDialogue Drawingをやろうと思ったのはなぜでしょうか?

 

きっかけは、人間の心理に興味を持つ中で、対話を通して相手の内面にある答えを引き出す「コーチング」に出会い、資格を取ったことです。そこで得た対話のノウハウと絵を繋げることで、私にしかできない形でその人の内面を絵を通して浮かび上がらせることが出来るのではないかと思い、友人を相手に初めて実施しました。
終わってみると私自身充実感がありましたし、友人も凄く良かったと言ってくれました。また、対話を通して、その人の中で語られたがっている物語があるんだなということを実感しました。それ以来、個展活動と合わせてDialogue Drawingを様々な地域で開催するようになり、今では私の活動の大きな軸となっています。

 

ーDialogue Drawingを体験される方のきっかけや対話中の様子を教えて下さい。

 

お誕生日や結婚、転職などの節目をきっかけに申し込みされる方が多いです。話す内容は人によって様々ですが、これまでの時間を振り返ったり、これからどう生きていきたいのかなど、未来に想いを馳せることもあります。その中で、無意識になっていた想いを言語化したり、人に話すことで自分を客観視することができたりと、心が整理される方もいらっしゃいます。このようにセッション中は参加者がご自身にまつわる様々な想いと向き合うことが多く、中には想いがあふれ、涙を流す方もいらっしゃいます。私自身はなるべくニュートラルな気持ちで対話をしながら、直感的に閃いた形と色を即興で描いていきます。セッションが終わると同時に、仕上がったばかりの作品を差し上げるのですが、たった今話したばかりのその方の想いが絵という結晶となり、それを手に取れるということで、感動される方も多いです。

 

クリエイターとして大切にしていること、信念

 

ー多くのクリエイターは自己の表現にアートを用いるかと思いますが、野村さんは相手に寄り添って相手の感情や個性を表現する媒介としての役割を担おうとしているようにも見えます。他者との関わりをそこまで重要視する理由はなぜでしょうか。

 

絵というものは他者との関わりがあって初めて命が吹き込まれるものだと思っているからです。 例えば個展は私自身の内的世界を描いていますが、その作品をご覧になった人が、作品に共感して、ご覧になった方自身のものとして作品に込めた想いを受け取ってくれます。Dialogue Drawingの場合は、相手の言葉を私が受け取って、私の中に落とし込んでその方の内的世界を絵にしています。そこにも何か共鳴するものがあるから、他者のものが自分のものとなり、他者のもとへ帰っていくという循環があると思うんです。
「私たちは皆繋がっている」という意識が私の気持ちの根底にあるので、本来、自分の表現だとか他者の表現などの境界線はなく、そこにはただ共通の意識があって、それを絵にしている感じです。

 

ーどのようにして相手の言葉を作品に落とし込んでいるのでしょうか。

 

今この場の、この瞬間のやり取りを通して生まれる言葉の裏にあるエネルギーを感じています。私は言葉はただの記号だと認識していて、対話をしながらその記号を発しているその方自身のエネルギーを感じ取り、直感的にこの色!と閃いて作品に落とし込んでいます。余談ですが、直感が消える前にすぐに描けるよう、パレットに絵の具をあらかじめ準備して色を選び取れるようにしています。

 

ー相手と野村さんの中にある何かが反応しているんですね。

 

そうですね、私と相手の方、さらには空間全体にあるエネルギーをキャッチしています。それを絵に落としているような感覚です。

 

ーその時の野村さんの心の中は『無』ですか?

 

「無」というよりも、入れ物のような感覚です。あれこれ思考せず、対話で繰り広げられる言葉とその奥にあるエネルギーが体の中を循環している感じです。対話から自分の中に言葉が入ってきて、その裏にあるエネルギーを色として出す、入れ物になっている感覚です。

 

作品を見てもらう環境、展示スペースへのこだわり

 

ーブティックなど、一般的にイメージされるギャラリーではない場所での展示も多くされていますが、何か意図があるのでしょうか。

 

実は意図してなくて、全てご縁なんです。今回の展示会場のオーナーさんも、知人からご紹介いただきましたし、過去の展示に関しても同様で、昨冬東京で開催した展示会場は、大阪の個展を見に来られた方とのご縁です。実はその方は東京でお店をされているオーナーさんで「ぜひうちでも展示して欲しい」とオファーをいただきました。先月徳島で開催した二人展も、一緒に展示した洋裁家の方の紹介だったり…これも繋がりですね。私はご縁を一番に大事にしたいんです。

 

ー今までで印象に残ってるターニングポイントになった作品やこの出会いがすごく大きかったなどのエピソードはありますか?

絵を描き始めて2年目の、初めて大きいギャラリーで展示をした時のことです。打ち合わせの際にギャラリーの方に、正面玄関に大きい作品があるといいよねと言われたんです。当時大きな作品を描くことに苦手意識があったのですが、模索しながらも描き、大作を展示しました。そうしたらその作品を、あるお客様が眺めながら涙を流されていました。お話を伺うと、「色々プライベートで大変なことがあって...でもこの作品を見て心が洗われました」と仰ってその作品を買ってくださったんです。大きい作品への手応えという意味でも嬉しかったですし、やっぱり絵って心の深い所に届くものなんだと実感させられた出来事でしたね。
実はその作品を展示した個展は、絵を描き始めた当初の表現である動物などの具象をモチーフとした作品から、現在の抽象的な表現でやっていこうと決意し、初めて行った展示だったので、色んな意味で思い出深く、ターニングポイントとなりました。

 

ー涙を流された感情は、絵から発せられた何かを感じ取られ共鳴する部分があったのですね。作品にはその時の野村さんの想いや感情、魂が反映され、見ている方がその時抱えている想いとリンクするのかもしれません。こういう体験から、様々な学びを得たりDialogue Drawingをはじめとする現在の活動へと繋がっているんですね。

 

 

 

③さいごに

 

ー数あるサービスの中から当サービスを選んでいただいた理由は何だったのでしょうか?

 

このサービスを作家の友人より紹介いただいたというのも一つのご縁ですね。
ARTWORKS.galleryはviirtual galleryへの展開など新しい試みをされているのも決め手の一つでした。これからの時代に沿った新しいカタチを築いていく気概を感じます。

 

ー当サービスに掲載いただいている作品から1点、ぜひご紹介をお願いします!

 

Timeless Time -今を抱く-』という作品をご紹介したいと思います。私たちはどうしても、これまでの過去への後悔や、これからの未来への不安などに気持ちの焦点が当たってしまうことがありますが、この作品は「今ここ」に意識を向けることの大切さを絵にしました。
私にとって「今この瞬間」や、「時間を超える」というのは大事なテーマでもあります。毎回個展では『layers of this momentー今を重ねるー』というシリーズを展示していますし、Dialogue Drawingもその人の中にある「今ここ」にあるものを描いています。

 

抽象画の楽しみ方

 

ー抽象画はアート初心者には見方がわからずハードルを感じる傾向があるようですが、鑑賞する際のポイントがあれば教えて下さい。

 

私なりの見方ですが、まずはこの色が好きとか、雰囲気が好きとか、自分の心の感覚を頼りに見て欲しいです。さらに、感覚的に好きな作品に出会えたら、タイトルや説明文にある言葉から絵の解釈のヒントを得て、改めて作品を眺め、自分の中で複合的な見方を発見してもらえたら嬉しいです。
抽象画って、見る時によって感じ方が変わるのも面白さのひとつだと思います。その時々によって同じ作品でも自分のその時の意識によって見え方が全く異なるので、自分自身との対話の時間にもなりますし、それが結果的に自分を知るための手立てにもなるので、奥が深いと感じますね。

 

ーただ作品を見るだけじゃなく、作品を通して自分を振り返るアイテムにもなるんですね。クリエイター視点の楽しみ方を皆さんぜひ参考にしてください。

 

ー今後はどのような活動を予定されていますか

 

4月はDialogue Drawingの特別イベントを東京で開催します。5月は香川と大阪でそれぞれ展示予定です。その後夏の期間は北海道で滞在制作を行い、秋以降は東京と大阪でワークショップと個展を行う予定です。最新情報はインスタグラムをチェックしていただけると嬉しいです。

 

ー野村さんの作品を今年はたくさん見る機会があるんですね!最後に、ファンの方にメッセージをお願いします!

 

ファンの方のおかげで今の私がいると思っています。これまでの個展に足を運び、作品を見ていただいたり、購入いただいたりと、様々な形で関わっていただいているおかげで、活動を続けることができています。ファンの皆様には「本当にありがとうございます」と感謝を伝えたいです。
これからも色んなところで活動していくので足を運んでいただけたら嬉しいです。

 

ー直接絵をみて、機会があればDialogue Drawingも受けて欲しいですね。
ちなみにプランがいくつかありますが、違いは何ですか?

 

プランは単発のものが2つと、回数を重ねていく長期のものが1つあります。

 

<単発>
ライブドローイング:対話をしながらその場で描いていくため、目の前で作品が生まれていく過程を楽しめる。
対話中心:話すことだけに集中するため、自分の想いをゆっくりと棚卸しでき、作品がどんな形になったのか、手元に届くまでの楽しみがある。

 

<複数回>
Dialogue Drawing -layers of me-:1〜2ヶ月に1回、定期的にオンラインで対話しながら即興で作品を描いていく。回数を重ねていくことで、自分自身を多面的に捉えることができる。

 

体のメンテナンスで整体に行くのと同じように、心のメンテナンスとしてDialogue Drawingを使っていただけたらと思っています。まずは単発のプランを体験してもらい、もし定期的に体験したいと思われたら、複数回プランのDialogue Drawing-layers of me-をおすすめしたいです。

 

▶︎野村さんHP

▶︎野村さんTwitter

▶︎野村さんInstagram

 

 

 

自然体で、しなやかな柔らかさとあたたかさを感じる野村さん。インタビューではお話を伺いながらもこちらが多くの学びを得た気がしました。同時に、明るく気さくな人柄で、Dialogue Drawingを受けに来られる方が安心してお話されている様子を感じることが出来、私も一ファンとしていつか自分だけの作品を作っていただけたらなと思いました。

 

”絵が好き”という純粋な気持ちから歩み始められたクリエイターとしての第二の人生。 転機となる様々な経験を通して軸を発見し、ファンの方々との対話を通じて生み出される作品は唯一無二の野村さんの人生そのものかもしれません。
じっくりと自分自身と向き合い、色んな価値観を吸収しながら進化を続ける野村さんの魅力的な世界観をぜひ皆さんにもご覧いただきたいと思います。きっと今のご自身が共感できる作品との出会いがあるはずです。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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