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忘れられた巨匠“ハマスホイ”。今改めて注目される、時の止まった安らぎの世界。

こんにちは、ARTWORKS.galleryです。

今回は日本ではまだあまり知られていない、
世界で人気の巨匠をピックアップしてお伝えします!

この記事では独自の世界観を持つ “北欧のフェルメール” とも呼ばれる
デンマークを代表する画家、ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916)をご紹介します。

ハマスホイはモノクロームな色調と、簡素な室内、後ろ姿の人物など、まるで時が止まったかのような独特な世界を確立し、生涯それを変えることがなかった人物。

そんな独自のハマスホイの作品は、近年になって欧米の主要な美術館が続々とコレクションに加えるなど世界的に脚光を浴びており、日本では2008年から注目されはじめました。
さらに2020年には東京で大規模な展示が開催されたもののコロナの影響で中止。改めて来年2023年1月よりハマスホイの作品展示が予定されています。

 

ハマスホイの作品に心引かれた方の感想は…
  • 「たくさんの情報が溢れ息苦しさを感じる今、安らぎを感じる」
  • 「奥深い美しさや静寂、儚さなど“侘び寂び”に近いものを感じる」
  • 「作品の多くが謎めいていて、色々な想像を巡らせる」

 

今、注目されるハマスホイの作品をご紹介します。

 

 

忘れ去られた巨匠、ハマスホイ

ヴィルヘルム・ハマスホイは19世紀、デンマークで活躍した画家です。
近年まで忘れられていましたが、存命中にヨーロッパを代表する画家のひとりとして評価されています。44歳でデンマーク王立美術院の会員に就任、47歳でヨーロッパ各国で個展を開催し、評価され、51歳で死去しました。その後急速に忘れられ、再評価されたのは20世紀末になってからです。

 

 

 

“静寂な空間”に見出した独自の美しさ

ハマスホイの作品は、19世紀に発展した「室内画」がメイン。
当時、室内画は日常の温かな暮らしを描くことが主流であったところ、ハマスホイの室内画は生活感や物語を想像させるものが一切無い、独自の作風でした。

作中の部屋はハマスホイの自宅の一室です。作品はどれも極力色を抑えたモノクローム。さらに人物の表現は無人か、後ろ向きが多く、もし顔が描かれていても鑑賞者と視線を合わせないように描かれ、作品のコンセプトやテーマもタイトル以外に解釈の手がかりが排除されています。

鑑賞者に対して歩み寄ることのないそっけなさがあるのに、謎めいた独自の静かな魅力を感じ取ることができます。

 

 

謎めいた静寂の室内画3作品を紹介

床に日差しが差し込む ストランドゲート のリビング ルーム

 

 

リアルな空気感の追求。40色で表現した「白」

窓から差し込む明るい光が印象的な白を基調とした作品です。
「白色」と一色で表現していますが驚くことに、この作品は40色以上を使用して白が表現されています。これは作品の修繕作業の中で明らかになったとのこと。その微妙なニュアンスを取り入れることで「リアル」な空気感と静けさのある独特の雰囲気を放っているのかもしれませんね。
ハマスホイ自身「絵というものは色が少なければ少ないほど色彩的な意味において最高の効果をもつ」と言っており、彼のシンプルな色彩の持つ奥深い美学を感じ取ることができるのではないでしょうか。

また、背を向けている女性はただ俯いてるだけなのか、何か手紙を書いてるのか…うかがい知ることができません。作品から物語性を排除することで作品に「静けさ」という要素を強めているように感じます。

 

 

 

 

ノスタルジーなモチーフと最先端の構図のコントラスト

こちらの作品も、自宅の一室を描いた作品です。
ハマスホイの自宅であるにも関わらず生活感を感じられず、静けさが漂ってきます。 扉の向こうに描かれた家具は、作品が制作された時代においても古いもので、彼自身「古い建物、古い家具、そういったものが持つ独特の雰囲気が好きなんだ」と言ってるように、ノスタルジーを感じさせるセッティングであることがわかります。 というのも、当時コペンハーゲンは近代化により古い建物が取り壊されるようになったという時代背景があります。
それ以前にあった、古き良きものがなくなってしまうことへの悲しみや物懐かしい思いなどが作品には込められているのです。

また、郷愁とは対照的に、ハマスホイは写真への興味を持ち、美的な部分だけでなく、作品のヒントを収集する道具としても魅力を感じ、旅先や自宅で撮影をしていたのだそう。こちらの作品においても、扉左側やテーブルの下が暗いのに対し、右側は差し込む光で明るく、コントラストがはっきりしています。また、奥行きある構図からも、写真からの影響が窺えるのではないでしょうか。

 

 

ピアノの女性とインテリア

 

 

奥から手前、そして鑑賞者へとなめらかな導線

ハマスホイの妻イーダが背を向けてピアノの前に座っている作品です。
グレー、白、茶、黒の色調で、控えめで内省的な雰囲気を放っています。
作品の構図を見てみると、水平に伸びる線と垂直に伸びる線が多く存在しています。茶色のピアノを起点として、手前にあるテーブルクロスと壁面が作品を上下に隔てていることがわかります。これにより、鑑賞者の視線は、壁面の落ち着きのあるグレーの色調から、手前のテーブルクロスの柔らかな白色へと移行し、最後には鑑賞者の空間へと自然と戻ってくる、滑らかな構図となっているのです。

また、額縁やお皿が二つずつある配置や、オイルランプとピアノの脚の縦のラインと共に、反対側にある壁面の2本の白い装飾も縦のラインを作り、呼応するように整合性が取られています。
整ったモチーフの配置や鑑賞者の目の置き所をスムーズにさせてくれる整然とした構図が、落ち着きや静寂に包まれた空間を生み出しています。
また、手前にあるリネンのテーブルクロスのあっさりとした質感や、食器の陶器ならではの冷たさや硬さ、常温で置いたバターの柔らかさなど、日常にあるものをシンプルながら、巧みに表現していることもハマスホイ作品の魅力です。

 

 

 

いかがでしたか。

ハマスホイの作品からはどれも、静寂が広がっています。
その静寂は無人であることや構図、色など複数の要素を組み上げてつくられ、そこに安定感が感じられます。

近年改めて作品が注目されているのは、その静寂な室内に、日常の慌ただしさを忘れられる一時の安らぎを覚えるからではないでしょうか。 そんな独自の魅力あるハマスホイの作品が鑑賞できる展示は、箱根のポーラ美術館にて、2023年1月28日(土)より7月2日(日)まで開催されます。

ARTWORKS.galleryでも今回取り上げたハマスホイの作品をご覧いただけます


▶︎ハマスホイの作品を見る

これからもまだ日本であまり知られていない、巨匠の魅力をピックアップして「アートをより身近に」して参りますのでぜひご期待ください。

 

 

企画展「部屋のみる夢 ─ ボナールからティルマンス、現代の作家まで」
会期:2023年1月28日(土)~7月2日(日) 会期中無休
会場:ポーラ美術館 展示室1・3
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285

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