クリエイターインタビューvol.1|写真家 藤原 嘉騎さん -世界がいま注目する才能。誰も見たことのない作品を生み出す写真家の素顔とは-
こんにちは、次世代ARTプラットフォーム『ARTWORKS.gallery』運営チームの宮久保です。
本シリーズでは、登録クリエイターにインタビューを行い、その人となりや作品制作の裏側にせまるインタビュー記事を発信していきます。 素敵な作品だけではなく、クリエイター自身のことも知っていただき、“もっとアートを身近に”感じていただければと思います。
記念すべきVol.1は、国内外で幅広く活躍されているフォトグラファーの藤原 嘉騎さんにインタビューさせていただきました。
【藤原 嘉騎さんProfile】
米国 Walt Disney Company、National Geographicとフォトグラファー契約を結び、世界を旅してまだ見ぬ風景を求め撮影を行っている。
世界最高峰のコンテストであるNational Geographic Travel Photo Contest `People’ 世界2位を受賞。その他にも国内外のコンテストで多数の受賞歴がある。多くの企業から依頼を受け写真を提供すると共に、Adobe Lightroom CCプロモーションムービーへ出演する他、新聞・書籍・雑誌など数多くのメディアでも活動している。
世界に誇れる実績を持つメンバーのみで構成されたクリエイティブ集団 Japan Art Entertainment にも所属する。
①写真家としての始まり
写真との出会い
ープロスノーボーダーを経て写真家になるという異色の経歴をお持ちですが、 写真の魅力に気づいた時のエピソードを教えてください。
私が写真を始めたのは10年くらい前で、スノーボードでの事故により引退したことがきっかけです。当時はプロのスノーボーダーとして写真や動画を撮られる側で、事故を起こしたのは撮影中での出来事でした。
崖上からスピードをつけて山を滑り降り、切り立った崖下にある道路を飛び越える『ロードギャップ』という撮影に挑んでいた時でした。崖上から飛び出す瞬間に体制を崩してしまい、スピードに乗った状態で建物でいうと3階ほどの高さから道路にそのまま叩き付けられてしまいました。落ちる瞬間は非常にゆっくりでスローモーションのように時間が流れたのを今でも覚えています。
目覚めるとベッドの上で、お医者さんから「死ぬかもしれないので家族の連絡先を教えてください」と言われるほどの大怪我を負ってしまいました。命には別状はなかったのですがプロとしては活動できない後遺症が残ってしまい選手としての活動を断念しました。
その後、この先どうしようかと考えながら世界を巡って、最後に訪れたのが屋久島でした。純粋に自然を楽しむのが目的だったのでせっかくだからカメラを買おうと、10万円くらいする初心者用カメラを購入しました。
ーそんな大怪我を乗り越えての転身だったんですね。。
世界各国を巡った締めが屋久島だったとの事ですが、屋久島には以前から興味があったのですか?
やはり縄文杉など豊かな自然が有名なので、一度は見てみたいと思っていました。
そこで初めて長時間露光の撮影をしてみたのですが、写真の仕上がりを見て衝撃を受けました。川の流れが美しい絹のように表現されていて「めちゃくちゃカメラって面白い!」と、そこから一気に写真にはまっていきましたね。
▲写真の魅力に気づくきっかけとなった屋久島の作品
②写真家として大切にしていること
▲SNSで話題になったバルーンの作品
写真家としての転機
ー2014年には佐賀県で撮影されたバルーンの作品がSNSを通じて広く知られるようになりました。海外で撮影されたかのようなこの作品はどのようにして生まれたのでしょうか。
この作品は写真を撮り始めて3年ほど経った時にそろそろ人と違う作品を撮りたいなと思うようになった頃のものですね。
トルコのカッパドキアのバルーンを見に行きたかったのですが、当時治安が悪く現地に行けなかったんです。なので、国内で似たようなものがないか探して…それで訪れたのが佐賀県でした。
当時発表されていた写真は会場からバルーンを撮影した写真しかなくて、誰も見たことが無い面白いアングルを求めてとにかく会場周辺を歩き回ったのを覚えています。
そして会場から川を挟んだ対岸へ行ったときに、水の流れがおとなしくて、水面が反射しているポイントを見つけたんです。ここならバルーンとその反射、朝日も撮れるかもしれない、という可能性を感じました。
ただ、初めて参加したのでどこからバルーンが飛ぶのかも分からない中、撮影ポイントはかなり端っこの方だったので、遠すぎて全然見えなかったらどうしようと、本当に不安でしたね。
さらに天候にも恵まれなかったんです。バルーンが飛ばなくて、初日から4日間は撮影できませんでした。
当初の予定では4日間の滞在だったのですが、このまま撮影できないのが悔しくて急遽もう1泊延長したんです。
そんな状況で、ようやく5日目でバルーンが飛んだときに夢中で撮影したのがこの作品です。正直、不安でいっぱいだったところで、バルーンの飛ぶ美しさが目に入ってきて感動で泣きながら撮影しましたね。
大会主催者やスポンサーの方々からも「このアングルは見たことがない!」と言っていただけたので、歩きまわってポジションを見つけたかいがありました。SNSでもたくさんの方から反響をいただいた一番思い入れのある作品です。
ーちょうど先日インスタにアップされていたバルーンの動画も臨場感がありましたね。毎年行かれるのですか?
はい、今年も会場主催者の方などから「来ないの?」とお誘いいただいたので行きました。動画は会場の中でバルーンが離陸していく姿を眼の前で撮らせてもらいました。
撮影地の人との出会い
ー2014年から交流が続いているんですね!バルーンに限らず、撮影時は地元の方との交流があるのでしょうか?
そうですね。わりと地元の方に声をかけられますね。みなさん気さくで「あっちで面白いもの見れるよ」と、まだあまり広く知られていない撮影場所も教えてくれます。
ただ、あまりに良い場所だったら、SNSにアップせずにお蔵入りさせる事もあります。最近はネットで検索すればすぐに撮影場所がわかってしまうので、人が集まってきて欲しい地域なのか、そうでない地域か、見極めながらSNSにあげるようにしてます。
プロとしての活動
ー話は変わりますが、藤原さんはNationalGeographicやDisneyとフォトグラファー契約をして国内外で活躍されていますね!NationalGeographicといえば、最高品質の記録写真を掲載する世界的なメディア。その公認プロになった経緯をお聞かせください。
私が写真をやり始めた2014年当時、NationalGeographicといえば写真の世界でトップのような存在だと感じていました。プロのスノーボーダーとして活動していた時、世界を見たらもっと凄い人がいっぱいると感じたことがあります。
その経験から、写真を始めた頃日本だけじゃなく世界をみようと思い、海外のコンテストばかり興味を持って見ているうちに、せっかくなら世界最高峰のNationalGeographicに応募してみようと挑戦を続けたところ、1万点以上の応募作品があるPeople部門で世界2位を受賞することができました。
受賞作品を撮影した場所に最初に訪れた時は昼間でした。
そこはバスケットボールなど思い思いに遊んでいる学生や若者たちで溢れていました。写真に写るおじいさんの足元を見てもらうとわかるのですが、コートの一部分だけ色が薄くなっているんです。それがすごく気になってしまい次の日の朝にもう一度訪れてみることにしたんです。行ってみるとすぐに謎が解けました。
毎朝、日が昇るこの時間におじいさんがこの場所に立ち太極拳をすることで足元の色が薄くなっていたんです。そして、このバスケットコートで太極拳を行っているおじいさんと背景にある虹色の住宅と朝陽により生まれた虹色のフレアというアンバランスな写真を撮影することができました。
これをきっかけにNationalGeographicやDisneyからプロ契約の連絡がきたり、国内外から仕事の依頼も増えました。
▲NationalGeographic公認プロのきっかけとなった作品
作品にかける思い
ー世界での活躍が具体的にイメージできました。そんな藤原さんの写真家、クリエイターとして伝えたいこと、大切にされていることはなんでしょうか?
自分が見て感動した景色や写真を始めた時のあの感動が私の写真で伝わったらいいなと思っています。
自分のスタイルとしては、じっくり見ることで楽しめるような細部にこだわりが詰まった作品ではなく、単純に一目写真を見ただけで「行ってみたい!」と思ってくれる、それだけでいいんです。
例えば人間の目より広い範囲が撮れる広角レンズを使うと、普通にレンズを通しただけの作品よりも多くの情報を画面の中に入れることができます。だから写真を見た人は撮影場所の雰囲気も見ることができ、こんなところでこの風景が見えるんだ!と、行っていなくてもそこに行ったように感じられる。そんな写真をこれからも撮っていきたいと思っています。
③作品を届ける
危険な撮影地
ーダイレクトにその場で絶景を見ているような臨場感ある作品が持ち味の藤原さんですが、中にはかなり危険な場所で撮られた作品も見かけます。撮影時はどのような思いで挑まれているのでしょうか?
実は私、高所恐怖症なんですよね。この写真に写っている崖は、撮影に行った日も事故があったようで実際に人がヘリで運ばれているのを見ました。そのくらい危険な場所なので、正直撮影に行くときはためらいましたし怖かったですね。
ーボーダー時代の競技ではかなりの高さから飛ばれてましたよね。その時は怖くなかったのですか?(笑)
板が付くと違うんです!
崖の撮影も本当に怖くて行きたくなかったくらいですが、
結局、その怖さよりも撮りたい、見たい、という気持ちが勝つんです。
夜景とか星がきれいな場所って自殺の名所でもあったりするんですよね。幽霊や熊が出そうな山も、本音は一人で登りたくないです。でも、山の朝日の作品を撮るためには夜に登らないとダメで、とにかくその先の景色を見たくて…どれだけ怖くても、そこに行かないと見れない景色を求めて行ってしまいます。
ー怖くても好奇心が勝つ…。その強い気持ちが原動力となり、まだ誰も見たことのない作品が生まれるんですね!
SNSやブログで作品やノウハウを発信する意味
ーバルーン作品の発表はSNS上だったり、藤原さんは積極的にSNSを活用されていますね。SNSの魅力はどのようなところでしょうか?
コンテストや写真展に出さなくても、たくさんの方がSNSを通じて作品を見てくれるところですね。バルーンの写真もSNSを誰かが見てくれたおかげで注目され、今こうして写真家としてやっていけているので、本当にすごいツールだと思います。
ーSNSでの作品発表以外にも撮影ツアーの企画や、ブログでノウハウを発信されていますが、それはなぜですか?
写真を始めた10年前、写真の勉強をしようと思っても簡単には情報が手に入らず、色んな人の作品を見て、どうやればこんな風に撮れるのかと試行錯誤を繰り返していました。その苦労があるので、写真を始めたばかりの人に少しでもノウハウを提供できたらと思ってブログで発信しています。
また、ツアーは直接私の写真の撮り方を知りたい人がいらっしゃるので、自分が写真を撮る時に同時に何か教えられたらいいなと思ってやっています。一石二鳥ですね。でも実際はツアー中に質問を沢山いただくので自分の撮影時間は無いんです(笑)
ーご自身の苦労した経験から発信されていたんですね。
見せ方のこだわり
ー写真展など作品を展示する際の理想のスタイルはありますか?
写真展はやったほうがいいとよく言われますが、実は人見知りなので本当はなるべく隠れていたいんです(笑)
だからARTWORKSさんのVirtual Galleryはリアルに会わなくても皆さんにちゃんとした展示空間で写真を見てもらえるので、そのギャラリー感がとても気に入っています!販売ツールというよりは本当に自分のギャラリーとして使いたいと思っています。
例えばテーマを変えて定期的に写真を入れ替えたりしたいですし、今後機能が拡張するなら、自分が在廊している時はギャラリー内に在廊が表示されて、訪れたお客さんからメッセージをいただいたり、そういう機能があると最高ですね。
ー本リリースでは在廊が確認できたり、メッセージを残せる機能も予定しているので楽しみにしていてください。出来るだけ早く皆様にお届け出来るよう制作を進めています!
ARTWORKS.galleryを選んだ理由
ー最近は同様のサービスもありますが、数あるサービスの中から当Virtual Galleryを選んでいただいた理由は何でしょうか?
写真展の時に、リアル以外にもたくさんの方に見ていただけるツールとしてオンライン上のギャラリーがあったら面白いなと思っていました。それで色んなサービスを比較した結果、操作性や他社にはない作品の立体感が気に入ったんです。
リアルな写真展に行った時はよく解像度等、失礼なくらい近づいて見るのですが、それと同じようにARTWORKSのサンプルギャラリーの展示作品を見た時に、油絵の質感が立体的で驚きました!作った人のこだわりを感じましたし、Virtual Galleryへ絵画の作品を見に来た人たちは絶対喜ぶだろうなと思える再現性の高さがよくて、利用を決めました。
自分の作品は写真なので立体感は気にするところじゃないんですけど(笑)
ーありがとうございます!ギャラリーとして見ごたえのある空間になるよう制作していますので細部まで見ていただけて嬉しいですね。先日開催された東京カメラ部の展示会では藤原さんの作品を展示したVirtual GalleryのQRコードを置いていただきましたが、実際にご覧になったファンの方の反応はいかがでしたか。
皆さん楽しんでいってくれましたが、操作に不慣れな方もいましたね。
その人達が家に帰ってもう一回開いて上手く動かせるようになってくれてたらいいなと思います。
ーそうですね、Virtual Galleryはβ版の現在は無料でご覧いただけるので、ぜひ再度作品を楽しんでいただきたいと思います!
せっかくなのでこの機会に1点、Virtual Galleryに展示されている作品のご紹介をお願いします。
はい、『Lotus』という作品を紹介します。写真には写っていませんが、実は民家に囲まれているんです。右側にはかまぼこ工場もあって、そこの社長さんが作られた蓮畑で撮影したんです。でも民家が写ると現実に戻ってしまうので、民家が見えないように、下から上に見上げる感じで撮影しました。極楽浄土をイメージして、うっすらと全体を包む靄、蓮の花の下から光が幻想的に差し込んでいる様子を写しました。
ーこちらは東京カメラ部でも展示されていた最新作品ですね!まさかすぐ隣に民家や工場があるなんて想像もつかないほど美しい作品でした。
ここでも地元の方が綺麗に咲いているポイントを教えてくれたそうです。
現実を感じさせない、幻想的に咲き誇るこちらの作品を、ぜひVirutal Galleryで御覧ください!
▶藤原さんの Virtual Galleryを見る
④さいごに
今後の予定
ー写真家、表現者として活躍の場が益々広がっている藤原さんですが、今後の展望や来年以降の展示会の予定があればお聞かせください。
これからも、自分が行ったことのない所へ行き、見たことないものを見て作品として残したい、その気持ちで活動していきます。詳細はまだですが、来年もまた写真展には参加すると思います。
ファンの方にメッセージをお願いします!
今後も変わらずに、皆さんが行きたくなるような、感動していただける風景を撮っていきたいと思います。
普段忙しくてプライベートのSNSがなかなか更新できないんですが、実はお蔵入りの写真が沢山あるので、突然時期外れな作品をアップすることもあるかもしれません。逆に全然更新していなくてもちゃんと写真は撮ってますので、たまに見ていただけると嬉しいですね!
▶藤原さんTwitter
▶藤原さんInstagram
終始藤原さんの柔らかな人柄に和やかな雰囲気でお話を伺うことができました。
『自分が見たいものを撮りたい、自分が感動する風景を見に行きたい、それを写真に残したい』という、一途な思いで作品に向かう姿勢が随所で感じられました。黙々と撮影を続ける藤原さんについ地元の方が話しかけたくなる、そんな気持ちが分かったような気がします。
スノーボーダーから写真家へ、業界は違っても人に驚きや感動を与えてくれるマインドは両者に通じるものがあるのではないかと感じました。
まるで映画のワンシーンのようにドラマティックで壮大な自然の美しさをダイナミックに感じられる藤原さんの作品をみなさんもぜひご覧ください。
余談ですが、私は藤原さんのSNSを眺めているうちに作品の魅力に引き込まれて気がつけば最初の投稿まで遡っていました。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!